週末のデートで田中さんとの距離が縮まったと感じていた沙織だったが、週明けの月曜日、予期せぬ出来事が起こった。午前中の会議後、課長の小林から個人的に話があると別室に呼ばれたのだ。
「沙織、少し良いかな。」
重々しい雰囲気の小林に、沙織は心臓がドキッとした。何か仕事でミスをしただろうか。
別室に入ると、小林は少し困ったような表情で口を開いた。「あのね、沙織の服装について、少し気になることがあって。」
沙織は、最近お気に入りの透け感のあるブラウスのことを悟った。「はい…。」

「もちろん、おしゃれをすることは悪いことではないんだ。むしろ、素敵なことだと思う。ただね、最近、男性社員の間で、沙織の服装が話題になっているみたいで……その、透け感が少し刺激的だと感じる人もいるようなんだ。中には、性的な目で見ている人もいるかもしれない。」
小林の言葉は、沙織の胸に深く突き刺さった。おしゃれは自分のため、そして少しでも周りを明るくしたいという気持ちでしたことだったのに。性的な目で見られていたなんて、考えたくもなかった。
「申し訳ありません……。全く、そんなつもりは……。」
沙織は、顔が赤くなるのを抑えられなかった。せっかく褒めてくれた田中さんの言葉も、今となっては複雑な気持ちにさせる。
「いや、沙織が悪いと言っているわけではないんだ。ただ、職場という場を考えると、もう少しTPOを意識した方が良いかもしれないと思ってね。あくまで、一つの意見として聞いてくれれば良いから。」
その日の午後は、沙織は上の空だった。せっかく見つけた自分の好きなファッションが、周りの人を不快にさせていたのかもしれない。オフィスで田中さんと顔を合わせても、気まずくて目を合わせることができなかった。
そんな沙織の様子に気づいたのは、同じ部署の先輩である美咲だった。「沙織ちゃん、どうかしたの?元気ないみたいだけど。」
美咲に昨日の小林との会話を打ち明けると、美咲は少し困った顔をした後、こう言った。「うーん、確かに小林課長の言うことも一理あるかもしれないけど……沙織ちゃんのファッションはいつも素敵だよ。ただ、男性ってそういう風にしか見れない人もいるからね。悔しいけど。」
そして、美咲は続けた。「でもね、沙織ちゃんが好きなものを我慢する必要はないと思うの。TPOに合わせて、透け感の少ないブラウスを選んだり、インナーを工夫したりするだけでも、印象は変わるんじゃないかな?自分の好きなものを大切にしながら、周りへの配慮も忘れなければ、きっと大丈夫だよ。」
美咲の言葉に、沙織は少し救われた気がした。完全に自分の好きなものを諦めるのではなく、TPOに合わせて楽しむという選択肢がある。
それからの沙織は、オフィスに着ていくブラウスを選ぶ際、以前よりも少し慎重になった。透け感の少ない素材を選んだり、インナーの色をブラウスに合わせたり。それでも、完全に透け感をなくすのではなく、さりげないレースのキャミソールを合わせるなど、自分らしさは残すように工夫した。
すると、徐々に周りの反応も変わってきた。「今日のブラウスも素敵だね、沙織ちゃん」「いつもおしゃれに気を遣ってるね」と、好意的な言葉をかけてくれる人が増えたのだ。小林課長からも、「最近、落ち着いた素敵な装いになったね」と褒められた。
沙織は思った。自分の「好き」を大切にしながら、周りの意見にも耳を傾け、TPOを意識すること。それは、おしゃれを楽しむ上で大切なことなのかもしれない。そして、少しずつではあるけれど、自分のファッションが、職場でも認められ始めていることを感じて、沙織の心には、小さな自信が芽生え始めていた。
さくら師匠の解説コメント
透けコーデは、褒められることもあれば、注意を受けることもあります。
でもそれは「やめなさい」という否定ではなく、場との調和をどうとるかという問いかけです。沙織が学んだのは、好きなものを捨てるのではなく、TPOを意識して工夫すること。
例えば、透け感を抑えた素材にする、インナーをブラウスと同系色にする…それだけで印象は大きく変わります。ファッションは“自分の好き”と“周りへの配慮”をどうバランスさせるか。
その両方を意識できるようになると、おしゃれはもっと自由で、自信に満ちたものになります。